モリステとモリミュ

漫画「憂国のモリアーティ」は2016年からジャンプスクエアで連載中。既刊13巻(2021年1月現在)。ミュージカル化、舞台化両方されている。

ミュージカル、通称モリミュ。第1弾は2019年5月、第2弾は2020年7月公演。ウィリアム鈴木勝吾、シャーロック平野良のW主演。
ストレート、通称モリステ。2020年1月公演。ウィリアム荒牧慶彦主演、シャーロック北村諒
両作品とも大英帝国の醜聞までやっている。

ゲーム原作でもなく漫画原作なのにミュとステをほぼ同時期にやるという何とも画期的な試み。歌があるかの違いはあれど2.5の漫画原作ということはセリフもストーリーもほぼ同じということ。ただ流れはあるがホームズものなので、事件の組み合わせは自由。両作品どこをやったのか見るのも楽しい。
先にやったミュは、歌だけでなく演技の印象も色濃く。ステはどうなるかなと思ったが、、


モリステも面白い!!
モリステ脚本演出、西田大輔。前半は超ダイジェスト、後半はモリミュ1ではやっていない大英帝国の醜聞の話をじっくりと。テンポがよくて面白い話をギュギュットまとめ、どんどん進んでくから飽きない。ウィルとシャロが会わないのに話が成立している不思議。
キャストも舞台の雰囲気もとても華やか。話しをうまく組合せ、見応えがありながらスッキリ楽しく見れるので未読の方にもおすすめ。ウィルとシャロが美しい。痛快劇。

モリミュ脚本演出、西森英行。各キャラの心情を大事に原作の要点をしっかりと抑えていく。原作未読でもわかりやすいが、このセリフが歌に!この場面はこう演出したのか!と楽しみも生まれるので読んでからもお勧め。
W主人公を全面に出し、それぞれのチーム感や主演二人の関係性をクローズアップ。ベテランが揃い全員が演技と歌で感情をぶつけあう。見終わったとき満足感と心地よい疲労感のある作品。ちなみに生演奏、歌も全員上手い。


上の段がモリステ、下の段がモリミュで演じ方の違いを比べていきたいと思う。モリミュは2までを含めた印象です。主観ですので御容赦下さい。

〈ウィリアム・ジェームス・モリアーティ〉
ステ荒牧慶彦。荒牧ウィリアムは、感情が薄く何を考えてるかわからない孤高の存在。表面上は取り繕っていても仲間に対してさえ情があるのかないのかわからない。少し怖い。だけどその魅惑的な佇まい圧倒的カリスマ性に惹かれ、優秀な人物達が集い個々に動いてくれる。美しく人を惑わす妖狐。

ミュ鈴木勝吾。勝吾ウィリアムは、悪党には容赦ないがそれ以外にはとても情が厚い。チーム全体が家族のよう。神々しいほどの優しさとオーラ、優秀さに惹かれ皆が協力してくれる。悪魔の高音で人を操り裁きを下す。

だいぶ違うウィリアム。荒牧ウィルはサイコパスに焦点をあて、勝吾ウィルは弱いものを助けるという根底にある優しさに焦点をあてた。原作から出てきたかのような荒牧ウィルと、女神とも悪魔とも思える勝吾ウィルの圧巻の歌唱は必見。


シャーロック・ホームズ
ステ北村諒。北村シャーロックは光のやんちゃな主人公。乱暴なとこや横柄なとこはあるけど正義感が強くて優しい。話し方からも頭が良く、頼りになる存在なのがわかる。人気少年漫画の主人公のよう。そして色香のある美しいオーラ、その容姿から発せられる低音ボイスからの乱暴な言葉。上手いのはもちろん、見てるだけでもお金を払う価値がある。

ミュ平野良。平野シャーロックは闇の変人。何かあればすぐにでもこの世界からいなくなるかもしれないという危うさと狂気。謎に対する異様な執着。思考の速さが早口からもわかる天才ぷり。原作と原典のシャーロックが混ざりあう。台詞のように歌い、歌うように台詞を言う。そして漂う色気。一度はまると抜け出せない。

平野シャロが原作そのままだったので、それ以外ありえんという心持ちでモリステを見始めたが、アプローチは全然違うのに北村シャロもすごく憂国のシャーロック!北村シャロはやんちゃだが真っ当、光を放つ。平野シャロは癖があり薬物中毒、闇も放つ。表現の違いが面白い。


〈ジョン・H・ワトソン〉
ステ松井勇歩。松井ワトソンは、シャーロックの可愛い舎弟。シャーロックが唯一息抜きできる相手。癒し。和ませ役。とにかく仲良しで、いじられ愛される可愛い存在。柴犬。

ミュ鎌苅健太。鎌苅ワトソンは、シャーロックの天使。圧倒的光で闇落ちさせない存在。愛らしく包容力も溢れるほどに。実はジョンがシャロを上手くコントロールしている。飼い主。

両方見たことで、ワトソンはシャーロックの演技に合わせて作られていることに強く気付かされる。平野シャロの闇が深いので鎌苅ワトソンは光を強く照らし包みこむ必要があるし、逆に松井ワトソンは北村シャロが光なので照らす必要はなく仲良しの可愛い相棒でいい。


アルバート・ジェームス・モリアーティ〉
ステ瀬戸祐介。瀬戸アルバートはすごく頭も切れるし、悪巧みめちゃくちゃ考えてる。そして自ら動きまくる。優秀すぎる。抱かれたい。モリステのブレーン。

ミュ久保田秀敏。久保田アルバートは優雅で気品があって、まさに貴族。駆け引きが上手く、大人の余裕がある。でも心の闇が深すぎる。絶対にヤバい人。

アルバート兄様は両方ほんとに素敵。両作品ともそれぞれ魅力的で一番好き。アルバートでスピンオフ作ってほしい。


〈ルイス・ジェームス・モリアーティ〉
ステ糸川耀士郎。糸川ルイスは妖精。守りたくてしょうがないみんなの弟。誰にも触れさせたくないし、甘々に甘やかしたい。殺しなんてもってのほか。真っ当な道で生きてほしい。

ミュ山本一慶。一慶ルイスは強火の同担拒否。兄さんへの愛が凄まじい。シャーロックへの殺意が半端ない。兄さん以外どうでもいい。色んな意味で危ない。超強いのでどんどん戦ったほうがいい。

兄のことを大好きなのは一緒だし両方ルイスだが、ベクトルがまっったく違う。糸川ルイスの可愛さと一慶ルイスの美しさを一度拝むべし。


〈セバスチャン・モラン〉
ステ君沢ユウキ。君沢モランは歩くフェロモン。頼りになる兄貴。全部任せておけばいい安心感。戦いを挑んでも絶対にかなわない。えっ急に脱いだ!肉体やば。

ミュ井澤勇貴。井澤モランは硬派。美声。かっこいい。頭の回転もはやく、性格に難がありすぎるウイリアムチームのバランスを取る。女は寄せ付けない。足が長い。とにかく長い。

君沢モランは刺激が強い、大人の色気をぶつけてくる。井澤モランはモリミュ2がおすすめ、全人類惚れる。
フレッドだけは、赤澤フレッドの静かな情熱が好きすぎて比べられない。


脚本演出はもちろん、演技も両作品違いがはっきりしている。ここはこっちがよかった、同じセリフでもこういう表現があるのかとか考えるだけでも楽しくて、だから両方見ると余計に楽しい。
ただモリステはモリミュと話しがあまり被らないように大英帝国の醜聞までかっ飛ばしているので細かく考えず見たほうがいい。逆にモリミュはもっとスッキリできたんじゃないかなと思う部分も。こればっかりは好みの問題。
現在は円盤を買うしか見る手段がないけど、たまに日テレプラスで放送するのでチェックしてみて下さい(2021年1月に両方放送されます)。そして両作品とも続編お待ちしてます。


憂国のモリアーティはアニメもはじまり第一期が終わったところ。アニメも原作に沿うだけでなく少し変えていて違いが面白い。しかもアニメより舞台が先なので、先にミュとステそれぞれ俳優さんの解釈で演じ、あとから声優さんの解釈も聞けるという贅沢。メディアミックスが色々あって恵まれている憂国のモリアーティをどうぞよろしくお願いします。