舞台「明治座の変~麒麟にの・る」#る変 #るひま

題材は本能寺の変平野良、安西慎太郎のW主演。天下人のみに見えるという麒麟が出てきたり、令和からタイムスリップしてくる竹中半兵衛がいたりと、とんでも話なのかと思いきやそこは取っ掛かりでしかなくて、兄弟の少し切ないでも見終わったあとは心が温かくなるそんなお話。

るひま×明治座の年末シリーズ。今回で9年目。年末るひまは特殊で、るひまに出ている常連役者が主演になれば、るひまのファンで集客できていた。でも近年は年末舞台が増え、集客も難しくなっていることに加え、主演のできる力量のある人を囲い込めなかったことで主演不足に。そこで白羽の矢がたったのが平野良。シリーズには6年前に一度出たきり。だが元々年末るひまは鍋派生であること、未だに伝説になっている「ちゅらくてほー」があったからかるひまファンにも歓迎された。

脚本、赤澤ムック。お話しがエモかった。23人それぞれに見せ場もあってバランスがよく、あてがきされた脚本。特に安西くんと平野さんの実力を見越した上での作りになっておりムックさんの二人への信頼も垣間見えた。
る変は兄弟のお話。名前を捨てた2人。自分が何者かわからなくなっても思いがすれ違っても、自分は兄であり弟であるという思いだけは捨てきれない。伏線もあって気付いたときの驚き。悲しい最後ではあるが、あーよかったなと不思議と余韻が残る。ファンタジーでどこかロマンチックで、とても素敵なお話でした。

演出、徳川家康役、日替わりルイスフロイス役、原田優一。演出のときは演者として出たくない派なのに、るひまに馬車馬のように働かされた原田さん。2部にも出てた。原田さんが演者の時は、割とねちっこい笑いなのでどんな風になるかと思ったら、驚くほど無駄のないスッキリとした演出!エチュードがないのも良き。笑いもあるが平野×加藤さん、谷戸さんが主軸にいたので安定感と面白さもあり、話にも絡んでいたのでちゃんと演劇の一部に。物語を考察する余地を残しながらも大事な部分以外をそぎ落とし、歌や殺陣など全てのバランスも絶妙。中だるみもなく、スッと頭に話しが入ってきた。番外編として演出を任されたのもすごく納得。そして演者としても、やっぱり歌がめちゃめちゃ上手いし見せ方も上手。笑いも達者でルイスフロイスで出てきたときはすごい笑った。


織田信長役、安西慎太郎。平野さんと人物の作り方が似ていると思った。少し癖があってインパクトある魅力的な織田信長。狂気の中に悲しみと哀愁が見えた。とてもこわい役でどんどん狂っていくのに、誰か僕を止めてと叫んでいるようにも思えて、可哀想だったし愛おしくさえ感じた。
そしてW座長の相性がとてつもなく良かった。9つ年齢が離れた芝居のベクトルが似ている天才同士の今だからのやり取りで、安西くんがどんどん打ち込み、平野さんが大きくしっかり受け止める。次はどんなやり取りが行われるのかワクワクして、いつまでも2人の芝居を見ていたいと思える初めての感覚に陥った。また共演してほしい。あと平野さんの慎ちゃん呼びがたまらんかった。

明智光秀役、平野良。他の人がやれば、特徴が多く印象強い織田信長に喰われてもおかしくない役。才能がかいまみえる瞬間は少しだけあるが、飄々としていてとにかく逃げ回るので、よくよく考えると全部お前のせいだと思えてイラッとしてくる。でも何故か嫌いになれない。愛嬌があって根底には深い優しさがあるのが伝わってくる。狂ってしまった弟を深い深い優しさで包み込む。そのうち観客をも優しさで包み込んでいき、自然と心を掴まれる。
普通の人の役を天下の織田信長と対等もしくはそれ以上にしてしまう凄さよ。またガチッと固めた安西信長に対し肩の力が抜けた演技で、お互いに魅力が増したのは勿論、長い公演時間でも胃もたれせず見ることができた。
そして歌!もう聞き入ってしまう。パンの歌も大好きだし、今回心情を歌って聞かせる歌唱が多くてとてもよかった。最後弟に対して歌うとこは何度みても涙ぐんでしまう。感情が流れ込んでくる。早くDVDを下さい!


きりん役、加藤啓。45歳とにかく可愛い。顔もいい。きりん!きりん!と言っていて子供のような言動も多い。ポンコツと言われ、安楽死させるとまで言われ、高所恐怖症をなおして空を飛ぼうとがんばっている。どんどん愛着湧いていなくなったときは悲しすぎた。アドリブもさすがで平野さんに頭のおかしい大人と言われた意味もわかる。平野さんとのコンビ好きすぎた。

飼育員田村さん役、中村龍介。神の使い。なんだろ綺麗な顔に加えて、この世のものでない感がすごかった。笑ってても笑ってない。感情がなく体温がない感じ。ずっとすげえなと思って見てた。

石田三成役、谷戸亮太。笑いも芝居も雰囲気も好き。言葉を発しなくとも首の傾き目線でお芝居できる。イケメンイケメンと言ってるとイケメンに見えてきたし、まともで有能で優しくて、誰と付き合いたいかと言われたら三成と付き合いたいとまで思った。

竹中半兵衛役、井阪郁巳。話題性で起用されただけでしょと穿った見方をしていたら普通によかった。間が上手い。一人だけ令和からタイムスリップした発明の天才。令和から来たので良い意味で溶け込まず異質な人として存在していて、良きスパイス。

お市役、凰稀かなめ。男役のイメージだったので、まず声の可愛さにびっくり。そして歌声、気品、威厳。色々なものを覚悟する姫として完璧。オーラが凄い。2部でドレスアップして登場するのをみるのが楽しみだった。

浅井長政役、大山真志。たっきーの代役をしてくれた。るひまシリーズ常連で座長経験もあり、歌も芝居も上手く、そしてたっきーと似ていたのはまわりを明るく照らす雰囲気。やさしさ溢れた繊細な真志の長政かっこよかった。あとわがままボディなのに2部で踊らせると機敏で引きつける魅力がすごい。

正親町天皇役、辻本祐樹。色香と気品と狂気と安定感が凄い。神の子として奔放に振る舞いながらも、まわりと同じように生きられない悲しみみたいなものも感じた。本編と関係ないけど、2部で「1月1日」歌う前に平野さんとワチャワチャしてた。平野さんは段取りわからず「どうやるの、言って、言って。」と甘えてるし、辻ちゃんは耳打ちしてるし、今回は普段も安西くんのお兄ちゃんやってるなと思ってたけど頼れる人がいて良かった(何目線…)。

おっちゃん役、粟根まこと。超越していた。空気を落ち着かせ、一瞬で自分のペース。独特のリズムで語り継ぐ。優しい歌声。2部も全力で参加してくれ、どこか可愛らしく愛される雰囲気を持った方だと思った。


そして2部、特にカウントダウンはお腹がよじれるほど笑った。日比谷方面で仕事出来なくなる覚悟で挑む演出家、目のいっちゃってるイエスと様子のおかしいブッタ、許可の無いMAXの音源でそのまま踊る人達、段取りできない吉法師、頭おかしい人ばっかり集まった48カーブ。タイムキーパーを放棄して面白い方向へ促す司会の三上さん。
とくに48カーブは、イケメンオーラでキラキラ踊って低音ボイスの松田岳くんが、啓さんや嶺くんによってどんどんおかしくなっていく様子が面白くて、これがるひまの醍醐味か!ってなったし、嶺くんは本編すごいイケメンの秀吉だったけど 、そのぶん2部で壊れててこれが噂の木ノ本嶺浩か!てなった。そしてみんな頭のネジが飛ぶなか、通常運転で一番ぶっ飛んでる推しに何故か安心(?)した。推しとカウントダウンできて、そのあと死ぬほど笑えるなんて幸せな時間でした。

必要なスキルはクレイジーさも含めて全てもっているのに、どうしてよんでくれないんだと思っていた年末るひま。第九弾でやっと座長として呼んでくれて、平野さんの魅力を一度にたくさん見れた気がしてとても楽しかった。るひまさんも平野さんの存在に急に気付いたか5ヶ月の間に3つもお仕事くれたし、明治座さんからもミュージカルのお仕事もらった。これからも、どうぞご贔屓にお願いします!!