ミュージカル「憂国のモリアーティ」♯モリミュ

シャーロックホームズに出てくる敵、ウイリアム・ジェームズ・モリアーティ教授が主人公のお話。漫画原作。もちろんウイリアムをはじめ全員美形。ウイリアムが腐った貴族社会を壊すために、市民を苦しめている貴族を完全犯罪により抹殺、貴族の悪行を表舞台にさらし、色々な方法で世直しをしていく話。ダークヒーロー。シャーロックをも利用し手玉に取っているウイリアムだが…。

 

ミュージカルはウイリアムとホームズのW主人公。ピアノとバイオリンの生演奏。2.5ではめずらしい。今回は安心安定のキャスト、演出家を揃え、憂国は.5界隈にはあまり知られていない様子だけど、公式の宣伝も上手く、なんかこのキャスト陣すごそうじゃない?という感じでジワジワ売れた公演。

 

2時間半のこの作品。終わった後みんなつぶやく。やべぇ。もう一回見たい。実際、満足度がすごい。原作もしっかりしているが、脚本も三部構成で大事な要素を入れ込みながらわかりやすく上手く作られている。役者陣の顔が美しい。オーラもある。圧倒的歌唱。演技も上手い。原作再現度が半端ない。

両陣営の対比も良き。モリアーティ家は内に情熱を秘め、任務を淡々と遂行していき空気は重め。ピアノメイン。歌をまっすぐに歌い上げる。対してホームズ陣は、ウイットに明るい。バイオリンメイン。セリフを語るように歌う。

 

イリアム、鈴木勝吾。こんな歌うまい人ミュージカル界以外で存在してたの?こんな高音ボイスだせて声量あってお顔も良くて演技も出来る希少な人種なのに、事務所は何してるの?と謎の思いが湧いた。凜とした孤高の雰囲気は出ていたが、作曲家さんが勝吾くんこんな音域広いんだよ!作るの楽しい!みたいな曲沢山歌わせていたので、歌が上手すぎるという印象が強く残り、ウイリアム感がよくわからなかった。それくらい圧巻。

 

 アルバート、久保田秀敏。アルバート兄様!漫画のまま!手を後ろに組んで、胸をずっと張っているのだが、胸板が素敵。姿勢が良くて、余裕があって、所作がキレイで、どう見ても貴族。キャラ的には、すごい真っ当に見えるけど、幼き頃に自分の考えの為に親まで殺す狂った人。目が笑ってない感じがいい。

 

ルイス、山本一慶。このお方すごい。ウイリアムを心酔し支えたいと思っている弟。すごいイケボで柔らかい声を出す。歌も上手くて、良い声で声量もあって。ウイリアムしか眼中にないやばい雰囲気もある。個人的には、顔を焼く場面が好き。美しく色気もあって、ルイスが好きになった。

 

モラン大佐、井澤勇貴。立ってるだけで完璧なモラン大佐。背が高くて、ワイルドな雰囲気に、たばこを吸う仕草。足長。男前。欲を言うと、声がもう少し太いといいのだけど、ご本人はすごい綺麗な声してるからな。井澤さんの歌声がとても好きです。もっと下さい。

 

フレッド、赤澤遼太郎。色々変装するのだけど、どれもお上手。赤澤さんだと気づかなくて、びっくりしたりした。歌も歌えるし、殺陣も早くて見えなかったくらいだし、先輩方みんなにかわいがられるのもわかるくらい可愛らしい。

 

エンダース卿、小南光司。ゲスで悪党役。お歌はまだ伸び代あるけど、演技は狂気も感じたし、最後の場面は鳥肌立った。このお顔で背も高くて、演技もうまいとなれば…もっと売れる未来が見える。

 

ワトソン、鎌苅健太。上手い!間も絶妙でホームズとも波長があってる。キャスティング神。2幕の後半からしか出てこないのに、可愛いという強烈な印象を残す。他の人物はみな闇を抱えてるけど、完全な光!いるだけで明るくなる。憂国のワトソンは子犬のような感じだが、モリミュのワトソンは強火のシャーロック推し。「僕だけは君の味方だ。」のセリフは漫画にも出てくるが、同じセリフを歌っているのに推しへの愛をすごく感じて、このワトソンが近くにいるからシャーロックは生きてられるんだと思った。

 

 

ホームズ、平野良。1幕後半から登場。前半の重い空気が漂う中、すぐに会場の空気を掴み自然に明るい空気に変える。また前半モリアーティ家について丁寧に伝えることで、少しフワッとなった感じを、平野良が場の支配力でギュッと引き締める。

  憂国のホームズは推理力以外は性質が違うのでホームズ?という感じもあるが、平野良が演じることで、奇人変人、推理の時のホームズハンド(顔の前に手を合わせる)・早口がうまく表現されていて、けだるく豪快な感じのキャラはそのままに憂国のホームズはホームズだった!と思わされた。言い回しも立ち振る舞いも、自分が脳内再生していた憂国のホームズをはるかに上回って再現されていた。煙草を吸う、前髪をかきあげる、雨の日ジャケットを頭に被る、色気も半端ない。

 

 推理場面がまたすごい。推理場面って映像だと色んな場面に切り替わるが、舞台上だと一人でひたすら説明するだけになる。だが平野さんがやると、すごい早口なのに巧みなセリフ回しと滑舌の良さで、膨大なセリフの内容が入ってくるし飽きない。

 歌も勝吾くんの悪魔の高音の独壇場になりそうな所だが引けを取らない。安定感、テンポ、声量どれもすごい。セリフを歌に乗せることが多いが、もちろん何を言っているかわかるし気持ちも伝わる。そして語るように歌うので心地がいい。繊細で魅せられる。

 

 

今回、これこそミュのW主演という感じだった。勝吾くんが歌で殴り、平野さんが歌と演技で魅せる。他のキャストもみな漫画から出てきたようで、かつ魅力的だった。それに華を添え重要な役割を担うアンサンブル、影の主役生演奏。そして西森さんの得意なドラマチックでお互いの関係性を際立たせる演出がすごくはまっていた。

 作品を重視し、ここまでキャラに寄せた上で魅力的に演じられて、かつ顔がいいのは2.5次元ならではだと思う。しかも歌が上手いって…2.5次元ミュージカルの完成形な感じがしました。続編希望です。

 

  一つ気になるのは、ステの存在。キャスト変えます…?他のみんなもだけど平野さんと同じ役やるとかプレッシャー半端ない。

 

 

追記:おももくで、ホームズの役作りについて話してくれた。かなり憂国のホームズと原作のホームズとのあんばいを考えたとのこと。(どうしてを考えるに至ったか等色々話しているので、ニコ動「平野良のおもいッきり木曜日」第49夜の44分頃からご覧下さい。登録すると、同じくモリミュの話しもしている第48夜の鎌苅さん小南くんゲスト回等も見れます)

 けれどあんばいを考えたにもかかわらず憂国のホームズそのままだと感じた人が多かったのは、幼少期からみんな多かれ少なかれホームズ像がすり込まれていて、憂国を読んでいるときでも原作のホームズ像を重ね合わせて読んでいるのからなのかもしれない。だから原作を混ぜ合わせたことで、よけいにイメージ通りと感じた。結果的に憂国ファンにもシャーロキアンにも納得してもらえる。すごい絶妙なバランス感覚。天才か。