ミュージカル「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」♯ファクトリーガールズ

女性だからというだけで低賃金で長時間労働を強いられている工場で働く女性たちが、現状を打破するためそして女性の権利向上のため立ち上がるお話。
女性が声をあげる度に虐げられてきた歴史から、編集長になった元ファクトリーガールズのハリエットは男達の顔色をうかがいながら、記事や公演会を使いゆっくりと女性の立場を向上させようとしていた。対するサラは現在進行形で自分達が虐げられている今の状況をすぐに変えなければ命も危ないという危機感から、攻撃的な記事を書き、訴えを起こし早急に行動しようとする。対立していくサラとハリエット。2人は、女性達はどうなってしまうのか。

サラとハリエットの対立は、声をあげる方法の違いであって、あくまで敵は社会であるという構図を崩さないところがドロドロしてなくて見やすかった。物語も女性目線だけではなく、男の管理者達の考えも垣間見えたり、もっとひどい差別をうけている移民者の話があったり、今の社会にも繋がるようなお話が色々とあり身につまされた。
世界観や衣装は「朱と煤」のようにほとんどが白と黒の世界で構成されていた。理解はできる。工場のお話だし貧乏な設定だし…衣装は工夫が凝らしてあって素敵だったし。でも女性が多いしせっかくだから色味がなくともステージングとか照明の工夫でもう少し華やかだったらなぁ。

サラ役、柚希礼音。カリスマ性と圧倒的オーラを必要とするこの役はまさに当たり役。実際にいるファクトリーガールズは十数名だったが、私にはうしろに数千人見えた。歌も魅力的で声量があって迫力があり素敵だった。男性がほぼ出て来ないが柚希さんを見てれば満足するので問題ない。

ハリエット役、ソニン。演技がうまい。歌に感情を込めるのがうまい。清楚で大人しそうだが、できる女ハリエット。苦悩する姿に萌える。改革おこしがちなソニンさん。歌に情熱や怒りを目一杯込められるので、おこさせたくなる理由がわかる。

アビゲイル役、実咲凜音。素敵!!アビゲイルのファンになった人も多かったのでは。綺麗で凛としてて、人の心に寄り添い、時に励まし時に叱ってくれ、いざというときは守ってくれる。姉御。だから悲しみも倍増した。

マーシャ役、石田ニコル。もー可愛い!お人形さんみたいに可愛いのに歌はパワフルで迫力がある。役作りも上手くて、彼女の存在は大きかった。以前の悔しさからミュージカルは避けていて久しぶりのようだけど華がすごくあるし歌も素敵なのでどんどん出てほしい。また見たい。

ラーコム夫人/オールドルーシー役、剣幸。お綺麗だし歌うまいし、ウイットにとんだこと言っても何しても気品がある。光の膜をつねに纏っている。そして役柄的にも母性溢れるお方。こんな風に歳をとりたいけれど、たぶん生まれ変わっても無理。

グレイティーズ役、谷口ゆうな。とにかく歌声が素敵。泣きそうになった。みんなを包み込む暖かいオーラを持っていて空気がやわらかくなる。

ベンジャミン役、猪塚健太。キスシーンかっこよくてキュンとなった。でもベンジャミンはハリエットのこと考えてるようで、イヤきっと何も考えてないボンボン。色々な役ができるようなので再演があったらサイコ側面強めで演じてみてほしい。
平野さんのツイッターの師匠。稽古場で心閉ざしがちの平野さんも心を開く素敵なお方。ご本人は誠実さが滲み出ているし可愛らしい。きっと人たらし。

戸井勝海さんも原田優一さんもインパクトも上手さもさすが。男性陣はプリンシパルは4人いるが女性メインであまり出て来ない。でも重要な役どころなので演技力がある濃い人が集められた感じがした。男性陣が薄味だと全体が薄くなる。


シェイマス役、平野良。出て来た瞬間からイケボ。どんどんいい声になってませんか。シェイマスも出てきては決め台詞を言う。短いセンテンスでも説得力とできる男感をしっかりと印象付け、サラを導くのにふさわしい人物を作り出していた。でもシェイマスは最後尻込みしてしまう。そこで!?と思う一方で、ずっと移民の立場に立ってきたからこそ、移民のことを思うと何も言えなくなってしまったんだなぁと感じた。でも何かもっといっぱい出てもよかった気がした役だった。

作品も評価が高かった様子。でもやっぱり出番がな……うん…アミューズ主宰だけど、ソロはあったし、る変に出るきっかけ(逆かしれんが)になったのだろうし。あと色々な技術が求められる年末るひまにおいて演出の原田さんに多少なりとも実力を知ってもらえるのは良かった。そして、る変の主演になったからW主催の明治座がモリミュ見に来て、明治座主催のチェーザレでることになったのかもしれないし。全部想像だけど繋がってる感じのお仕事が続いている。


アミューズの宣伝力はすごかったけど、初演なのもあり女性だけなのもあり集客が弱くて、そんな中チラシや宣伝文句がいけなかったと言ってる方がいて、チラシはおしゃれな感じじゃなく、歌詞にある「戦え!最後に笑うのは私たちだ!」を表題に工場の中で柚希さん筆頭にしてうしろにガールズ達並べて煙立ち上らせたらよかったんじゃないかみたいな事をつぶやいていて、まさにそれ!ってなった。パワフルに歌えるかっこいい女性が多かったからもったいなかった。ビジュアル大事。女性だけのミュージカルは珍しいしお話も面白かったので、どうしたらよかったかなぁとあれこれ考えました。再演を願っております。