シラノ・ド・ベルジュラック 5/26

醜いが強くて詩のセンスに長けたシラノが、愛するロクサーヌと男前だが言葉を紡げないクリスチャン の恋の手助けをするお話し。

この舞台、戯曲でありながら見易いように現代語を入れたりと軽めの仕上がり。前半ホントにドラマくらい軽いので、私はもう少しお堅くてもよかったかなと…。でも見易い、面白いと絶賛の声が圧倒的です。後半は、感情が溢れ出ている場面が多く、ぐいぐい引き込まれました。

吉田鋼太郎さん演じるシラノ。エネルギーが身体から溢れ出ていて、そのエネルギーを浴びせるだけでなく段々こちらがそのエネルギーに取り込まれていく感じがしました。言葉を伝える力引き込む力が凄いです。

黒木瞳さん演じるロクサーヌ。ホントに輝いておりました。宝塚出身の成せる技なのか大女優だからかわかりませんが、そのへんの小わっぱには出せない輝き。間の取り方も絶妙で、こんな上手かったのかと感動。クリスチャンが恋に落ちても納得。

六角精児さん演じる、ド・ギッシュ伯爵。悪役なんですが、どうやっても憎めない。キャラクター作りが絶妙です。

白洲迅くん演じるクリスチャン。身体が大きいし男前なので舞台ばえする。後半の切ない思いを出す場面は流石でした。ドラマのときから思ってましたが、男前なのに悲壮感が似合う。


平野良演じるヴァルヴァーニ子爵。何かもうひたすら可愛いです。ずっとピョンピョンしてるイメージ。くるくる変わる表情がもう可愛い。
決闘場面では、シラノにあしらわれ一人ちょこまかしてますが、殺陣もさすがで、あー上手いし可愛いなぁとニコニコしてしまいました。

アホさは今回、とても愛くるしいアホとして仕上がっています。バカにされてるのに誉められてると勘違いしたりと頭はかなり弱いですが、自分なりに頑張ろうと一生懸命で、そんな子爵を周りも何だかんだ助けてくれる。

平野さんは稽古でなんパターンかアホの演技を見せて、演出家さんにもアホの役よくやるの?と聞かれるほど評判がよかった様子。推し、引き出しすごいでしょと勝手に得意気になりました。

見せ場もありましたが、なにせ脇役。主演は大ベテラン、日生劇場。いつもよりかなり芝居の降り幅を押さえていました。アンサンブルに至ってはオーラを消して溶け込んでおり、順応性が高いなぁと。村井さんが、平野くんは脇も出来ると言っていたのはこういう意味かと妙に納得しました。

ヴァルヴァーニの破壊力は凄かったですし、NHKでいつか放送されるらしいので、とてつもなく楽しみです。脇役はあまりやらないので、沢山の中から推しを見つけるのも楽しくずっと追ってました。でもやはり推しには真ん中で溢れんばかりのオーラと演技力を見せつけてほしい!推し主演のストレートがみたい!と強く思った舞台でした。

しゃばけ弐 dvd

とてもほっこりする作品です。妖怪がわちゃわちゃします。

前半は、平野良がまったく出てこないですが、藤原祐規さん演じる屏風覗きがひたすら可愛く、お雛さんの歌のうまさに驚愕していると、後半の松之助のターンに。植ちゃんの影武者は、舞台ではもう気になって仕方なかったですが、DVDでは特に気にならず。

平野良演じる松之助さんは、やさしく、自信がなく、根暗です。でも仕事が出来て、困っている人がいるとすかさず庇ってあげたりと、男らしい一面もあるので、応援しなくては!という気にすごいさせます。ビジュアル撮影では、プライドが滲みでてるとダメだしをもらったそうですが、舞台ではそんな感じは微塵もなく、猫背で気弱な松之助が出来上がっていました。

一人でひたすら歌います。時代ものだからか、歌い方も渋い。孤独、小さな幸せ、喜び、怒り、どん底、感動。全部ほぼ一人で歌って、表現します。曲が一緒だったり曲調もあまり変わらないですが、そこは平野良。その時々で感情が伝わってくるので、聞くのがとても楽しいです。
あれっ松之助って実際いるのかなと思うほど 、舞台上で生きていました。怒っていても根底には松之助の優しさが見えますし、若旦那のところへ行くのを決心するも不安で仕方が無い様子が見えたりと、やさしくウジウジしているけれど現況を打開しようとする勇気をもっている松之助。幸せになってと願わずにはいられません。最後は心底よかったと気持ちが暖かくなりました。

舞台見たときすごく印象に残ったのが齋藤健心くん演じる平太。笑いをとっていて、何より間が絶妙で、この子は伸びる!と思っていたら、まさかの平野良プロデュース。もちろん間は役者さんの実力が大きいと思いますが、フレーズだったり、やり方だったり、迷っていた健心くんに平野さんが最終稽古くらいからアドバイスして出来上がったものらしく、演出の才能もあるなぁ思いました。

次は兄弟の共演が見たい。でも松之助さんが爽やかになってたらやだなぁと思ってたら、原作では相変わらずウジウジしている様子。是非続きを!

※特典映像はやらかしてます。
※CDすごくおすすめ。聞いてるだけで舞台の場景が浮かぶし、毎日耳が幸せになります。

『源氏物語~夢浮橋~』DVD

光源氏の子息であるプレイボーイの匂宮と、内向的な薫、それを取り巻く姫様達のお話。3人芝居。匂宮と薫は、日程の前半と後半で役を入れ換えるので、1つの作品で2パターン楽しめる。毒吐きます。苦手な方はスルーして下さい。

A面は平野さん匂宮、辻ちゃん
この話の主人公はどちらかというと薫。平野さんの匂宮は、カッコよくて強引でキザ。叫びたくなるほど男前。あんなに匂宮迫られたら即陥落する。ただ、匂宮は本能のまま基本生きているので、焦りは多少見えるが、何も考えてないように感じる。薫を引き立たせるには、正解かもしれないが、何せ辻ちゃんの薫が薄い(あくまで個人の好み)。誠実で真面目ゆえに色々やらかしてしまう 。内にはただそれだけなので、私としては引かれる部分が薄い。なので平野さんの匂宮にももう少し厚みがほしかった。遠野さんは、緊張もあるのだろうけど演技が…。

B面は、平野さん薫、辻ちゃん匂宮
B面見たとき、見たかったのはこれー!と思った。平野さんの薫は、純心で陰湿でドロドロしてる。狂気じみた部分もあり、危うい感じが凄くて目を離せない。大丈夫だよ。落ち着いて。って何度か言ってあげたくなった。何より独特の間合い。一人で全体の空気を司る。
辻ちゃんの匂宮も素敵。薫への対抗心がちょいちょい見え、プレイボーイというよりは情熱で訴えて落とす感じ。フッとした陰もあり、捨てちゃいけない気がする。子犬みたい。
遠野さんの演技は、慣れてきたのか、すこし良くなった。

B面は大好きな仕上がりでした。でも圧倒的にA面の平野匂宮が人気。これにより、私は闇を抱える平野さんの演技が好きなんだと確信。ベクトルは違えど、カミサマも煤も薫も大好きです。

砂岡事務所プロデュース『東海道四谷怪談』和装

随所に歌舞伎の要素を取り入れた、劇団独特の演出。私は歌舞伎が好きなので、なぜ歌舞伎風を見せられているのだろうと少しもやっとしましたが、斬新な演出であると振り切ってみると面白い作品です。お芝居は、内面はもちろん、所作や音響照明等、随所にこだわりが見え、骨太なものでした。

平野良伊右衛門役。色悪。かっこよくて色っぽくて、悪党。最初は回りに流され、成り行きのまま悪事を行いますが、段々と悪に染まっていきます。

最初、桑野くん演じる直助に比べると印象が薄いなと。オーラも演技ももっと出せるはずなのに何故だろうと思っていると、段々…段々…悪に染まり、見せ場の「首が飛んでも動いてみせるワ」では、悪に染まったオーラが会場じゅうにブワーと広まった感じがして、鳥肌が立ちました。そして群像劇なので、途中平野さん出て来ないなぁと思っていたのも忘れるほど、最後平野良が全てかっさらっていきました。ただの悪ではなく、本当はお岩のこと愛していたんだろうかとか、流されてしまう弱さとか、そういう人間味も見ていたからか、最後の場面では泣きそうになってしまいました。

あと、何より色っぽいです。色気がすごいです。そういう役ですが、特に特別なことはしてないように見えるのに。色気もコントロールできるんですね。驚愕です。


桑野晃輔演じる直助。感情がダイレクトに伝わるし、キャラクター作りも巧く、悪いことしてますが、幸せになって欲しいと応援してしまいました。発声がすごくいいから聞き取りやすい。以前平野さんが、同世代の中では頭ひとつ抜けているというようなことを言っていましたが納得です。

同じく砂岡事務所北村健人くん。小仏小平役とても素敵でした。指折られるときも、閉じ込められてる所も、おどろおどろしい所も、何をやってもうまい。4役やっていたのですが見た目じゃよくわからず…でもこの役は誰がやってるんだ…ずいぶんうまいな。これは北村さんだなと思うような判断をしていました。

白又くんは、やから感がでているとインタビューで言っていましたが、やから役はすごくかっこよくて違和感なかったですが、与茂吉も少しやから感が…まっすぐというより内面は悪いやつでしょみたいに思ってしまった。普段は好青年でそんな事思わないのになのになぁ。

メセモア白服さん。アイドル舐めてました。私、浮いてる方がいると気にとられて集中できなくなるので、大丈夫かなと正直思っていたのですが、さすが砂岡事務所。見極めて連れてきてらっしゃる。舞台もほぼ初心者とのことでしたが、出番がとても多く、大事な女役はほぼ担っていて、まだ稚拙さが残る部分もありますが、周りに負けることなくきちんと感情も出ていて、安定した演技をしていました。そして可愛かった。

宅悦役の植本純米さん。空気を掌握する力をお持ちで、いると空気が安定します。普段は可愛らしい方のようですが、素敵なおじさまだと思いました。

なだぎさん。上手い役者さんだと思いました。観る前はやり過ぎたりしないのかなと思っていたのですが、ちゃんと場に合わせて適度な加減でやられていて、空気を和ましていました。

演出家の方が一役一役寄り添って作ったという今作。役それぞれが生き生きとしていました。若さのエネルギーと、ベテランの安定感、演劇への挑戦を見せられた作品でした。
何より平野良の力量が存分に発揮された作品だったのではないでしょうか。悪人ながら滲み出る悪以外の感情、色気、壮絶な死に様。誰かこの役者をもっと大勢の前へと引き上げてくれないかという感情に駆られた今作でした。

『戦国御伽絵巻ヒデヨシ』DVD

とにかく平野さんの才能とビジュアルに酔いしれる作品。殺陣の美しさ、キャラ付け、心情の見せ方等全てが際立って見える舞台です。

まずはオープニング。短時間で何でそんなに格好よく殺陣できるんだ。色気も醸し出していて、もう美しすぎる。
そして序盤のお芝居。癖が強すぎないw?そんなことを思っていると、光秀の過去のお話しや、信長に認められない悲哀、孤独。何だかんだで秀吉にひかれている自分。だけど戦いにのみ自分の価値を見いだせる。だからそんな世の中にしていくんだという決意。
人物像が一貫していて、その中にある感情もかいま見え、とても魅力的な光秀になっている。

うまい。初めは何だこの人…と見せておいて、段々と過去のトラウマ、凹んでる様子、揺れる感情を魅力的に演じていく。そうすると何だ強がってるんだ可愛いなぁとなる。そして葛藤しながら、自分の生き方を決意する様子に、もう完全に応援している自分。計算されてる。


竹中半兵衛役の藤原祐規さんはとにかく格好よかったー!第一声からもう素敵。所作も綺麗で、気品も溢れ、殺陣もかっこ良くて。ずっとうっとり見てました。平野さんとは、演技の濃さが似てるから相性がいい。

家康役の鍛冶本さんは、演技がナチュラル。キャメルボックスさんは、心情を大事に自然に見せていくお芝居が多い印象。なので繊細なお芝居をしていたと思うが、周りの芝居が濃いので、家康が薄い印象になっていた。

シャチ役の佐藤永典さんは、華やかオーラ!いると目がいく引き込まれる。感情が芽生えていく、ふとした表情が素敵でした。

今回、秀吉の印象はクレイジー。マッチさんの元の人柄の良さがにじみ出ていたので、そこに引かれたのかなくらいしか…頭の良さも口の上手さも何故か脚本で上手く表現されていなかった。
あと三猿からの説明場面が多過ぎて、流れを止めていた。演技にグッとひきこまれていく所で、バスっと場面を止めるので、もっと見たかった、えっそこで?そこ必要?みたいなとこが多かった。三猿さんは可愛かったのですが…。

色々思うとこあれど、光秀さんは必見です。平野さんの魅力の詰まった作品となっております。

舞台『マリアビートル』 2月17日観劇

面白かった‼
何より演出が大好き!朱と煤同様、元吉演出は場面転換がとてもスムーズ。新幹線の各号車で色々起こってるので、あっちこっちに話がいくのだけど、それを椅子と人によって即座に話が移ったことが理解できる。話が途切れない。だから観客の集中も途切れない。

舞台セットは、床に1号車分の新幹線の間取り図が白線で描かれているだけ。そこにイメージ、心情に合わせた様々な形の椅子を演者が持ってきて座る。これが何ともお洒落。舞台だからこそできる演出。

音楽も生演奏のピアノの臨場感がすごいマッチしていた。実際に録音したという新幹線の音とともに、重要な役割を担っていた。


演者も完璧な配役。びっくりしたのが、檸檬役の碕理人くん。初見だったのだけど上手い!声も通る良い声で、難しい役を自然にこなしていた。

谷口賢志さんは二役やっていたのだが、あれホントに谷口さん?思うくらい別人だった。凄いな。

福圓美里さん。声優さんなのでアニメ声だが、遠方で電話で七尾とやりとりする役なので、その声がここにはいない電話上の感じがしてマッチしていた。考えられた配役だ。やり取りも軽快だった。

鈴木も王子も雰囲気が出ていて素敵だったし、一人一人誉めたら切りがないくらい、皆自然にそこにいたので、すごく入り込めた。

最後に七尾役は平野良でなければ成り立たなかったと思う。蜜柑檸檬、王子木村、前作から出てる鈴木スズメバチとキャラが濃い役ばかり。その中で、七尾が物語を最後まで見届ける役目を担っている。七尾の存在感が薄くても、物語がボヤっとするし、濃いと濃いキャラばかりで疲れてしまう。それを絶妙なバランス感覚で演じ、舞台を取り纏めていた。


原作ファンからも評価が高いので、次回は是非もっと大々的に宣伝して、再演されるべき作品だと思いました。

さよならソルシエ

熱狂的ファンのいる舞台『さよならソルシエ』。ゴッホと弟のお話。忠実とはだいぶ違うが、そうだったらいいなと思える作品。

2.5次元というより本格ミュージカル。舞台を見てると、演技に違和感がある人が必ずいるが、この作品は全員演技も歌も上手いので、ひっかかるものがなく、スッと見れる。アンサンブルも異次元にうまいので、厚みが増して、重厚なミュージカルになっている。画家のお話しということで、ここぞという時の、照明やダンサーの衣装などもとても綺麗。ピアノ1本というところが、さらに魅力を増していた。

兄弟愛に萌える。兄弟は、とても信頼しあっているが少し距離感がある。ベタベタよりも、その微妙な距離感がたまらない。おそらく実際も兄弟同様少し距離感があるので、カーテンコールでの持ち上げてグルグル、お互い少し照れた感じが良き。

平野さんがとにかく可愛い。こんなにフワフワと妖精のような演技ができることに驚き。それもわざとらしくなく、自然。フワフワしているだけじゃなくて、天才感も漂う。

歌い方も役によって全然違う。優しく可愛らしくふんわり包み込むように歌う。のびやかで、いつまでも聞いていたいくらい心地好い。

良知さんは、感情をバーンと出して歌う方。迫力もあり、大劇場のミュージカル向きだと思った。対して平野さんは大事に繊細に歌う。声量は負けてないが、大劇場のミュージカルとは少し違うのかなと今回思った。だけど底の知れない推しなので、そのときに合わせた歌い方になるだろうし、きっと大勢の方が魅了されると思う。大劇場の真ん中でスポットライトを浴びて歌う推しを一度見てみたい。